どうスタートする?=介護福祉士・梅本聡[6]
介護保険サービスを提供するためには、介護事業者は介護保険法に基づく指定を受けなければいけません。指定を受けるには、法令に定められた設備や運営の基準を満たす必要があり、「人員基準」も含まれています。その「人員基準」では、サービスごとに「資格や法定研修の修了が必要な職種(図参照)」や必要な人数が決められています。

◆未経験でスタートも可能
その中にあって、無資格や未経験でも従事できるのが、デイサービスと入居型施設(特養、老健、グループホーム等)の介護職員です。入居型施設には必ず複数の有資格者がいるので、指導を受けながら働くことができるからです。
ちなみに、要介護の方に自宅などで直接介護を提供する訪問介護員に従事するには、「介護職員初任者研修」以上の資格が必要です。訪問介護は訪問介護員が単独で仕事に携わることが多いので、資格(イコール一定の知識や技術等)が求められているのです。
介護業界は人材不足の影響もあるため、「無資格・未経験でもOK」という介護職員の求人を多く見かけます。ですが、「とりあえず、介護の仕事でもやるか」といった消去法的な選択で求人に応募するのは厳禁です。介護は本来、専門的知識や技術、職業倫理などが必要な仕事です。スタートは無資格・未経験でOKでも、就職先における教育やさまざまな現場経験、ゆくゆくは資格取得などを通じて自己研鑽をしていきます。人の生活を支え、人の命を預かる仕事ですから当然です。
ですが、「接客業の経験を活かして人と接する介護(仕事)がしてみたい」、「誰かの役に立ちたい」、「子育ての経験や家族を介護していた経験が活かせるかもしれない」といった積極的な選択で介護の仕事にチャレンジする方は、資格や経験がなくても多くの介護施設・事業所から歓迎されるでしょう。

◆働きながら資格取得も
働きながら資格を取得することをサポートしてくれる介護事業者も増えています。
介護の入門資格で基礎的な学びができる「介護職員初任者研修(旧ホームヘルパー2級)」や、その次のステップにあたる「実務者研修」の受講費用を補助してくれたり、研修受講を出勤扱いとして給与を支給してくれたりする事業者もあります。
無資格・未経験で介護の仕事に就く場合は、こういった資格取得に関する支援制度があるかどうかを職場選びの条件のひとつにしてみるのもいいのではないでしょうか。
◆資格取得後のスタートも
無資格・未経験からスタートできる介護の仕事ですが、未経験=知らない仕事ですから、不安を感じる方も多いことでしょう。
その場合は、仕事に就く前に「介護職員初任者研修」を受講・修了してみてはいかがでしょうか。この研修は、みなさんがお住まいの都道府県が指定した業者(研修実施校)が開催していて、130時間の研修カリキュラムを自宅学習と通学で受講します。
スケジュールと期間は研修実施校ごとに違い、土日のみ通うものから平日の夜間に通うもの、期間は1ヵ月程度から4ヵ月程度までありますので、自分の生活に合わせて選ぶことができます。
また、都道府県または市町村が資格取得にかかる費用を負担してくれる助成金制度(介護職員資格取得支援制度)もあります。支給額や対象となる要件はそれぞれの都道府県・市町村によって違いますので、お住まいの自治体に確認してみてください。
国家資格の「介護福祉士」は、介護職の上級職にあたります。現場で訓練と経験を積んで取得する方法もありますが、介護福祉士養成校を卒業し試験を受けて取得を目指すルートがあります。「養成校」という響きにためらうかもしれませんが、若者だけでなく、子育て中の人や定年を迎えセカンドキャリアを目指している方など、学んでいる人はさまざまです。
養成校では介護に関する知識や技術を基礎から学ぶことができ、実習先で多くの現場を見ることができるメリットがあります。時間的余裕がある方は、養成校に通うのもお勧めです。
修学にかかる費用については、都道府県の社会福祉協議会が窓口となっている「介護福祉士等修学資金貸付制度」を活用することもできます。


介護福祉士、梅本 聡(うめもと さとし)
介護コンサルティング、研修会講師などを行う株式会社「キューシップ」代表。一般社団法人「千葉市認知症介護指導者の会」会長。1974年生まれ。身体障害者施設、特別養護老人ホームに介護職、生活相談員として勤務。認知症グループホームではホーム長を務め、入居者が掃除・洗濯・炊事などの日常生活行為から「自分でできることは自分で頑張る」を基本とした自立型支援を実践してきた。「日中は施錠しない」「転ぶことがあるからと行動を抑制しない」を信条としている。著書に「認知症ケアの突破口」(中央法規出版)、みんなの介護で「介護の教科書:介護×認知症」を連載中。