休みが取りにくそうなイメージ=介護福祉士・梅本聡[5]

2021/10/15

前回に引き続き、今回も介護職の休みをテーマにお伝えします。
前回、医療・福祉業界の休日が他の産業と比較して、決して少ないわけではないことを厚生労働省の調査結果から確認しました。
では、有給休暇(有休)の取得状況はどうでしょうか。

(イメージ写真)

表の通り、医療・福祉業界の有休取得日数は年間8.9日ですから、約1.3ヵ月に1回の割合で有休を取得している計算になります。全産業平均に比べると取得日数・取得率ともに低い数字ですが大きな開きがあるわけではありません。

◆介護は人で成り立つ職場

「介護」はコロナ禍によって、サービス業ではなく、国民生活に不可欠なインフラとして社会的に位置づけられました。
しかし、介護サービスは人(介護職)が提供しており、機械が代わりを務めることができません。いわば、介護職そのものが、社会に欠かせないインフラと言えるわけです。それは、裏を返せば、人(介護職)が休む代わりを務められるのは人(介護職)しかいない、ということになります。施設介護であれば24時間365日の稼働ですから、介護職が一人休むなら、必ず代わりを務める介護職を一人確保する必要があります。介護は、「明日、有休を取ります」ということが容易ではない仕事なわけです。

そんな現実の中、有休の取得日数は確かに多いとは言えませんが、それでも全産業の中では平均的。
介護現場に余剰人員がそれほど多いわけではないことも踏まえると、この結果は多くの介護施設・事業所が職員の有休取得に努力している結果だと思います。

◆勤務体系は事業形態でさまざま

次は休みの取り方についてです。介護の仕事といっても、勤務体系は施設・事業所の事業形態(種類)によってさまざまなため、休みの取り方もそれぞれで違います。業態ごとの事情を見て見ましょう。

入居型施設
特別養護老人ホーム、老人保健施設、認知症グループホームなど、高齢者が入居して過ごす施設では、介護職が24時間365日体制で入居者の方に支援を提供します。
そのため介護職員は、土日・祝日は関係なく交代制勤務(シフト制)となり、支援の提供が途切れないようにします。
交代制勤務で代表的なのが、早番・日勤・遅番・夜勤の4交代制シフト。休日も交代で取得します。前回お伝えしたように、多くの介護施設・事業所が年間110日、月9日の休みとしていますので、基本的に週休2日になるようシフトを組む職場が多いです。

通所介護事業所
一般的にデイサービスやデイケアと呼ばれる事業所のことで、利用者の方に日帰りで食事や入浴、機能訓練などを提供します。
朝、車で利用者の方を迎えに行き、夕方自宅まで送る事業所がほとんどなので、介護職の勤務は日中の時間帯が基本となります。なかには、出勤時間を早めと遅めの例えば2パターンに分けて、利用者の送迎時間の選択肢を広げている事業所もあります。
通所介護事業所では、土日もしくは日曜日を定休にするところが多いので、土日定休日であれば週休2日制、日曜日定休の場合は、日曜日+1日で週休2日制とする職場が多いです。

訪問介護事業所
一般的にホームヘルプサービスと呼ばれる事業所です。介護職が利用者の住まいに訪問して、身体介護や生活援助を行います。
訪問介護事業所の多くは日中のみの営業のため、勤務も日中が基本です。なかには夜間対応を行う事業所があり、その場合は交代制勤務(シフト制)となる場合が多いです。
訪問介護は、土日または日曜日を定休日にしている事業所から、年中無休の事業所まで様々ですが、週休2日制がほとんどです。

このように介護の仕事は、様々な勤務体系、休みの取り方があるので、生活環境などにあわせて、職場を選べるメリットがあります。
また、24時間体制の入居型施設でも、日中の勤務のみでも融通しているところや、土日休みを希望すればそれに応じた勤務体制を組む施設もありますから、求人票のチェックだけでなく、採用面接時などに確認してみてください。

ちなみに、第2回でお伝えした「特定処遇改善加算」を介護施設・事業所が算定するには、職員の「両立支援・多様な働き方の推進」に取り組むことが要件のひとつとなっています。ですから、職員の多様な働き方の推進に取り組んでいる施設・事業所は既にあります。また今後、そのような介護施設・事業所が多くなっていくでしょう。
「介護の仕事は休みが取りにくそう」というイメージも変わっていくのではないでしょうか。

介護福祉士、梅本 聡(うめもと さとし)

介護コンサルティング、研修会講師などを行う株式会社「キューシップ」代表。一般社団法人「千葉市認知症介護指導者の会」会長。1974年生まれ。身体障害者施設、特別養護老人ホームに介護職、生活相談員として勤務。認知症グループホームではホーム長を務め、入居者が掃除・洗濯・炊事などの日常生活行為から「自分でできることは自分で頑張る」を基本とした自立型支援を実践してきた。「日中は施錠しない」「転ぶことがあるからと行動を抑制しない」を信条としている。著書に「認知症ケアの突破口」(中央法規出版)、みんなの介護で「介護の教科書:介護×認知症」を連載中。

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