介護業界は休みが取りにくいか?=介護福祉士・梅本聡[4]
人手不足と言われているせいか、介護職は「休みが取りにくそう」「休みが少なそう」というイメージを持っている方が多いようです。
実際のところはどうなのか、厚生労働省が行っている調査結果から確認してみましょう。

◆休日は全産業平均より多い
下の表は、厚生労働省の就労条件総合調査の抜粋で、医療・福祉業界の年間の平均休日を調べたものです。

介護業界の平均年間休日数はおよそ「110日」前後です。1カ月に換算すると、公休「月9日」(110日÷12ヵ月=9.1日)になります。
1年365日を週にすると、約52週ですから、週休2日なら年間104日の休日(52週×2日 = 104日)が確保されることになります。介護業界が極端に休みが少ないわけではないことが分かります。
では、他の産業と比較するとどうでしょうか。
表㊦は、同じ調査から、業種別の平均年間休日を比較したものです。「情報通信業」及び「学術研究,専門・技術サービス業」が 118.8 日と全産業の中で最も多く、最も少ないのが「宿泊業,飲食サービス業」の 97.1 日です。その他の産業と比較としても、医療・福祉の休日数が見劣りしているわけではありません。
また、全産業平均が107.9日となっていますので、介護業界の休日数が少なすぎるわけでもないようです。介護業界の休日数は多いわけでも少ないわけでもなく、全産業の中でも平均的な数字といっていいでしょう。
介護施設・事業所の求人票を見ても、年間110日勤務、月9日の休みとなっているところが多いようです。
◆中には実態が違う事業所も
ただ、求人票で年間110日、月9日の休みをうたいながら、実態が違う施設・事業所も稀に存在します。
そのような施設・事業所の多くは、自施設・事業所に最低限必要な職員数が確保できていないため、雇用している介護職員に残業や休日出勤をしてもらい、足りない分を埋めていることが多いのです。休日出勤した代わりに振替休日を取れればいいのですが、そもそも職員が足りないために難しい。そうなると、休日出勤で賃金は割増になるものの、休みが減るというケースもあるようです。
そういう事業所は、働き始める前に〝発見〟したいもの。見極める材料のひとつは「離職率」です。離職率が高いということは、離職による人材の流出が多く、職員一人あたりの仕事量が増大しやすいと考えられるからです。ただ、個々の事業所の離職率は一般に公開されていません。
◆離職率は情報公表システムでチェック!
そこで活用したいのが、全国の介護サービス事業所の詳細情報をインターネットで検索・閲覧できる「介護サービス情報公表システム」。
このサイトで気になる施設・事業所の「介護職員数」と「介護職員の退職者数」を調べ、「介護職員の退職者数÷介護職員数×100(%)」で計算すると離職率がわかります。
介護労働安定センターが行った「令和元年度 介護労働実態調査」によると、訪問介護員と介護職員(2職種計)の1年間の離職率は15.4%ですから、それと比較してみるのもいいでしょう。
多くの介護施設・事業所が、介護業界の平均休日数を確保しています。
また、夏季・冬季休暇のほか、誕生日休暇やアニバーサリー休暇、リフレッシュ休暇など独自の休暇制度を設け、介護職員のワークライフバランスを大切にする介護施設・事業所も増えてきています。
休日数だけでなく、そんな法定外福利厚生(企業が独自に行っている福利厚生)のひとつである特別休暇も職場を選ぶ判断材料のひとつとして目を向けてみてください。

介護福祉士、梅本 聡(うめもと さとし)
介護コンサルティング、研修会講師などを行う株式会社「キューシップ」代表。一般社団法人「千葉市認知症介護指導者の会」会長。1974年生まれ。身体障害者施設、特別養護老人ホームに介護職、生活相談員として勤務。認知症グループホームではホーム長を務め、入居者が掃除・洗濯・炊事などの日常生活行為から「自分でできることは自分で頑張る」を基本とした自立型支援を実践してきた。「日中は施錠しない」「転ぶことがあるからと行動を抑制しない」を信条としている。著書に「認知症ケアの突破口」(中央法規出版)、みんなの介護で「介護の教科書:介護×認知症」を連載中。