体力的にきついのか?=介護福祉士・梅本聡[3]

2021/10/01

「体力的にきつそう」「腰を痛めそう」
介護の仕事に、そんなイメージを持っている方がいるのではないでしょうか。ほかには、「介護って力仕事なんでしょ」と思っている方も多いかもしれません。
このようなイメージを持たれる方は、介護の仕事を「要介護の方の食事・排せつ・入浴・着替えなどを代わりにやってあげること」と思っているのではないでしょうか。
だから、ベッドから車イスに乗せるときは「どっこいしょ」と持ち上げなきゃいけない・・・、腰を痛めそうだし、力仕事だ、と。

(イメージ写真)

◆必要なのは腕力ではない

確かに昔は、「何でも代わりにしてさしあげる」のが介護でした。僕が介護の仕事に就いた28年前はそれが主流でしたし、今もそんな「お世話型」介護を行っている現場があるのも事実です。

一方で、そのような旧来の介護ではなく、「要介護でも、本人ができることは、自分でできるようにサポートする」「その上で、できないことは介護職員が介助する」ことを実践する介護施設・事業所も増えています。

そのような介護現場に必要なのは、腕力ではなく、ご本人が「自分でやってみよう」という気持ちにさせる、つまり、自らが動き出すきっかけを作る技術です。

このように、プロの介護職が提供する介護そのものが大きく変化してきています。「体力と腕力がめちゃめちゃ必要」などと、介護の仕事に尻込みすることなかれ!なのです。

◆抱え上げない「ボディメカニクス」

「そうは言っても、ベッドから車いすへ、車いすから便座へなど、場所を移るときに、介助が必要な方がいますよね?」と聞かれれば、答えは「はい」です。

「じゃあ、やっぱり介護は力仕事じゃないんですか?」と聞かれれば、答えは「いいえ」です。力仕事でない理由は、介護技術が進化し続けているからです。

例えば、ある場所からある場所に移る「移乗」の介助。僕が今から30年近く前に福祉専門学校で習ったり、介護の仕事に就いてから先輩に教えてもらったりした移乗介助は、「力任せに持ち上げる・抱え上げる介護方法」でした。それは、今ではスタンダードではありません。

今は、ボディメカニクス(人間本来の体の動きや力学などを活用した技術)などを活用した「持ち上げない・抱え上げない介護技術」が普及してきたからです。このような介護技術を習得することで、介護職は自分の体に負担をかけずに介助することができ、腰痛の予防にもつながっているのです。

 

◆介護機器を使う事業所も増加

また、進歩し続けているのは技術だけではありません。介護職員の負担を軽減する介護機器も進歩しています。そして、介護機器を積極的に現場へ導入している介護施設・事業所も増えています。

第1回・第2回でお伝えしましたが、国は「介護職員の処遇改善に取り組む事業者」には、介護報酬額を上乗せする「介護職員処遇改善加算」、「特定処遇改善加算」を設けています。その加算の算定要件のひとつとして、「職場環境・処遇の改善」を求めています。そのため、介護職員の腰痛対策を含む負担軽減のために、介護機器などの導入に力を入れる介護保険事業者はどんどん増えていくでしょう。

介護の仕事をしてみようかと職場を選ぶときには、その施設・事業所ではどのような介護方法をスタンダードとしているのか、介護機器等を導入しているのか、導入しているのであれば現場でどのくらい活用しているのか、などを確認してみるのもいいかもしれません。

介護福祉士、梅本 聡(うめもと さとし)

介護コンサルティング、研修会講師などを行う株式会社「キューシップ」代表。一般社団法人「千葉市認知症介護指導者の会」会長。1974年生まれ。身体障害者施設、特別養護老人ホームに介護職、生活相談員として勤務。認知症グループホームではホーム長を務め、入居者が掃除・洗濯・炊事などの日常生活行為から「自分でできることは自分で頑張る」を基本とした自立型支援を実践してきた。「日中は施錠しない」「転ぶことがあるからと行動を抑制しない」を信条としている。著書に「認知症ケアの突破口」(中央法規出版)、みんなの介護で「介護の教科書:介護×認知症」を連載中。

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