介護で給料を上げる方法=介護福祉士・梅本聡[2]

2021/09/24

介護サービスは一般に、「介護報酬」で運営されています。
介護報報酬とは、介護保険事業者が介護保険でサービスを提供する場合に、対価として支払われる報酬で、その事業所で働いている介護職員の給与の原資です。

(イメージ写真)

介護報酬の単価は、「このサービスを提供したら1回〇〇円」とか「要介護度3の方が特養に入所したら1日〇〇円」などと国が決めており、事業者が自由に価格設定することはできません。

これに対して、他の多くの業種では、自社で販売する商品や提供するサービスの価格を自社で自由に決めることができます。そのため同じ商品やサービスであっても、お店によって値段が違ったりするわけです。

さらに、介護保険事業者が1施設で提供できる介護サービスの利用者数(定員数)も法律で決められています。つまり、価格と顧客数が決められている介護保険事業は、おのずと売上の上限が決まり、他の業種のように売上を伸ばして利益や社員の給与を上げることが構造的に難しい面があります。

だからこそ、前回お伝えしたように、国は、職員の給与のみに充てることができる加算を設けて、介護職員の平均給与額を年々アップさせています。

ただ、介護職一人ひとりが給料を上げる方法もあります。

◆介護福祉士を取る

一つは、上位資格を取ることです。介護職は、訪問介護などを除き、無資格でも業務に就くことができます。しかし、介護職員の月額の平均給与を保有資格別に見ると、表のようになっています

どうでしょう。無資格の介護職と介護福祉士には、約5.3万円の給与の差があり、年収で見ると63.6万円に上ることがわかります。給料アップを考えるなら、介護福祉士の取得が必須といえるでしょう。また、介護福祉士を取得することで自分自身の介護技術・知識等のスキルアップにつながりますし、昇給や昇進も期待できます。転職も有利に進められます。

介護福祉士の取得を目指すには、実務者研修の修了が必要です。実務者研修は資格・経験を問わず誰でも受けることができる資格講座ですから、介護職の第一歩として実務者研修の修了を目指すのもいいでしょう。もっと初歩的に学ぶのであれば、初任者研修もありますし、さらに入門編にあたる入門的研修もあります。

表からも分かるように、実務者研修を修了するだけでも、無資格と比べると月給で2.7万円、年収で32.7万円の差があることは見逃せません。

◆ステップアップする

もう一つは、事業所内で管理職や指導職になるなど、ステップアップを目指すことです。介護施設も組織です。他の業種と同じように、事業所内には管理職や指導職といったポストが存在します。

役職・指導職の呼び方は施設によって異なりますが、指導職でいえば主任、副主任、リーダー、管理職でいえば施設長、管理者、ホーム長、部長、課長などと呼ばれる職位を置いているところが多いです。

介護労働安定センターの「令和元年度 介護労働実態調査」の結果によると、介護施設・事業所の管理者は、平均月給35万5,425円、平均賞与額は74万円8,659円とありますから、先ほどの介護福祉士の月給よりも高いことがわかります。

一般職よりも仕事の範囲が広く、責任のある職位となれば、一般職と比べ給与が高くなるのは、ある意味当然のこと。

「立場が上がれば給料が上がる」

それは介護も他の職業も変わらないのです。

◆就職先を選ぶ

3つめのカギは、介護職の処遇改善に取り組む施設・事業所に就職することです。

前回お伝えしたとおり、国は、「介護職員の処遇改善に取り組む事業所」には、介護報酬を上乗せする「介護職員処遇改善加算」を設けています。

令和2年度の介護従事者処遇状況等調査によると、この加算を取得している施設・事業所は約93%、未取得が約7%です。

また、処遇改善加算の上位加算であり、上乗せで支給される「特定処遇改善加算」を取得している施設・事業所は約63%、未取得が約37%という結果です。

当然ながら、加算を取得している施設・事業所の方が給与は良くなりますから、取得している事業所で働いた方が給与は上がります。求人票などの給与の詳細で手当として支給されているか、確認しましょう。

雇用主が本気で職員の待遇改善をしようと思っているなら、国の処遇改善に関する加算を取得することは、最初の一手です。その一手に取り組んでいるかどうか・・・。職場選びの大切な指標のひとつとしていいでしょう。

さらに、国の処遇改善施策をもとに、キャリアパスや労働環境の改善などに懸命に取り組む介護保険事業者と、そうでもない事業者も存在します。取り組んでいるかどうか、その事業者のホームページを必ず確認しましょう。介護職員処遇改善加算にもとづく取り組みについては、ホームページに掲載するなどして「見える化」することがルールです。

介護福祉士、梅本 聡(うめもと さとし)

介護コンサルティング、研修会講師などを行う株式会社「キューシップ」代表。一般社団法人「千葉市認知症介護指導者の会」会長。1974年生まれ。身体障害者施設、特別養護老人ホームに介護職、生活相談員として勤務。認知症グループホームではホーム長を務め、入居者が掃除・洗濯・炊事などの日常生活行為から「自分でできることは自分で頑張る」を基本とした自立型支援を実践してきた。「日中は施錠しない」「転ぶことがあるからと行動を抑制しない」を信条としている。著書に「認知症ケアの突破口」(中央法規出版)、みんなの介護で「介護の教科書:介護×認知症」を連載中。

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