介護度、2段階改善も 年も病気も「ごちゃまぜ」施設

2019/10/14

人と土地を元気にするのが、福祉職の役割ー。京都府宮津市の複合型施設「マ・ルート」には、特別養護老人ホーム(特養)、保育園、障害者施設、人材育成のための実習センターなどが同居する。年齢、疾患、障害の有無に関わらず、誰もが自分らしく過ごせる〝ごちゃまぜ〟な空間で、新しい人材が育っていく。
「子供と触れあうことで、高齢者が元気になっていくのが手に取るように分かる」
社会福祉法人「みねやま福祉会」が運営する複合型施設「マ・ルート」の実習センター長で社会福祉士の櫛田啓(たすく)さん(37)は、こうメリットを話す。同じ敷地内に子供、高齢者、障害者の施設があり、共有のサロンで、みんなが当たり前に一緒に過ごす。好きなおじいちゃんや、お気に入りのちびっ子ができるのも日常の風景だ。

「福祉の仕事にはまちづくりの可能性がある」と話す宮津総合実習センター長の櫛田啓さん=京都府宮津市

■元気になる高齢者

例えば、ある高齢男性は、スタッフがこれまで何度リハビリを勧めても、なかなか腰が上がらなかった。だが、保育園の子供と触れあったのをきっかけに、子供の顔を見るためにリハビリルームに通うようになった。

その成果か、入所時には介護保険の認定は要介護4と重かったが、子供と触れあう中で要介護2に改善。「最終的には、退所することができた」(櫛田さん)という。

触れあいは、子供にとっても成長のきっかけになる。病気や老いへの抵抗感が薄れる子供も少なくないという。

マ・ルートが目指す〝ごちゃまぜ〟は、利用者やその家族にとどまらない。海岸沿いの立地を生かして作られた敷地内の釣り堀スペースは、施設を利用しない人でも利用できる。

研修室は地域のバザーなどにも活用され、ギャラリーでは、誰でも利用者の作品を鑑賞できる。「福祉施設と地域の間には壁ができてしまいがちだが、施設は地域に働きかける場所でなければならない」と言う。

実習センターには、インターンシップの学生、実習生や研修生などが集まる。複合型の拠点では、さまざまな人や状況を学ぶことができ、福祉について総合的に学べるのが特徴だ。

利用者の作品が並べられた施設内のギャラリー。誰でも閲覧できる=京都府宮津市

■求む「創造性ある人」

櫛田さんは、福祉業界は転換期だと指摘する。これまでは、立派なハード(建物)を作り、利用者の数を多く集めることが求められた。しかし、「これからは地域と接点を持ち、地域と一緒に元気になっていくソフト(アイデア)が求められる」と言う。必要とされるのは、「高い専門性を持ち、従来の枠にとらわれないクリエーティブ(創造的)な発想のできる人」。そんな人材を育てるつもりだ。

「福祉の仕事には、人々を元気にし、その人々が暮らす地域を元気にすることが求められている。まちづくりを担う仕事になると確信している」と話している。

介護事業所は、離職率が3割を超すところもあるなど、質にバラツキがある。働きやすい職場を増やすため、厚生労働省は「介護事業者認証評価制度」を実施。人材育成に取り組む事業者の基準を示し、都道府県に評価・認証を求めている。取り組みは都道府県で差があるが、京都府は積極的。認証(上位・一般)、宣言に分けて評価する。みねやま福祉会は「上位認証事業所」の1つだ。
京都府のサイト「きょうと福祉人材育成認証制度」では、働きやすい事業所の検索もできる。サイトはこちら。https://kyoto294.net/student/seido/

 

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