介護助手導入で離職率低下

2020/03/01

介護施設でベッドメーキングや掃除、配膳などに携わる業務として、「介護助手」を新設する試みが注目されている。介護職の仕事の一部を、近隣住民が有償で担い、介護職にはケアに専念してもらう狙いだ。介護職の負担軽減になり、離職率低下にもなるという。

「介護助手さんがきてくれて、人が辞めなくなった実感がある」と話す介護福祉士の登百合香さん(右)

■家事の延長で働く

三重県津市の介護老人保健施設(老健)「いこいの森」には、30人の「介護助手」がいる。平均年齢は64・5歳。食事の配膳や下膳、掃除、洗濯物を畳んだりする。

ある介護助手の女性(68)は週5日、午後の3時間働く。仕事について、「いつも家でしているような内容。働くことで孫に小遣いもやれる。専門家の介護を間近に見られて、高齢者への声のかけ方などが勉強になる」という。

介護助手を発案したのは、「いこいの森」理事長で医師の東(ひがし)憲太郎さん。きっかけは、相次ぐ介護職の離職。心労の原因は何かと業務を総点検して、本来の介護でない「周辺業務」が多いことに驚いた。

いこいの森のリビングには喫茶コーナーがある。入所者が立ち寄り、面会に来た家族がコーヒーを飲んでいく

■募集倍率50倍

一方、高齢化の進む地元には、定年して生活には困らないが、社会貢献をしたい善意の人がたくさんいた。パートで来てもらおうとチラシを配ると、5人程度の募集に250人近い応募があり、倍率50倍の〝狭き門〟になった。以来、近隣の特別養護老人ホームやグループホームを誘って、取り組みを広げてきた。

事業者にとっては、介護助手の賃金分だけ負担増。だが、東理事長は「介護職が介護に集中できるようになり、専門性への自覚が高まった。介護のレベルが上がり、離職率も下がった」と喜ぶ。実際、導入した事業所の離職率は12%超から、平均で5・1%に低下。介護職へのアンケートでは、「専門性を自覚するようになった」との回答が6割に上った。

■隣に座って空を見る

介護福祉士の登(のぼり)百合香さん(39)は介護助手を導入する前の介護を、「利用者さんの隣に座る時間がなく、『ちょっと待っててください』を繰り返していた」という。

思い出すのは、新人時代にケアした認知症の女性だ。一生懸命話しかけたが、話すほど女性はいらだつ。困り果てて黙って横に座っていたら、女性が窓の外を見上げて言った。
「いい天気だね」
「いい天気ですね」
そのとき分かった。これだけで良かったんだ。会話が大事なわけではないんだ。登さんは「こういう仕事もあるんだ、と思った」と振り返る。

もちろん、介護の仕事はそれだけではない。老人保健施設は、身体機能が低下した人などにリハビリを提供し、家での暮らしを取り戻す施設だ。改善を果たす施設ほど入退所が頻繁で、その分、手間も増える。

だが、寝たきりだった人が車いすで移動し、経管栄養だった人が口から食べるようになる。それを共有する喜びも、忙しさのあまり失っていた。「以前と今の差は大きい。ゆとりができて周りが見えるようになった」。登さんはそう実感している。

介護老人保健施設とは・・・

特別養護老人ホームや介護医療院などと並ぶ介護保険3施設の一つ。要介護認定を受けた人を対象に、退院後の身体機能の回復や、家で暮らし続けるためのリハビリなどを提供する。数カ月単位の入所や、通い(デイケア)の利用ができる。全国に約4300の事業所があり、延べ56万人が使っている。

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