物作りを通し共に成長する =La Mano

2020/02/24

東京都町田市の自然豊かな里山に、優れたデザイン性と品質を備えた染め物や織物などの創作に取り組む福祉事業所がある。「クラフト工房 La Mano(ラ・マノ)」。「メンバー」と呼ばれる障害者らが物作りに携わり、自立を支援するスタッフらには美大出身者が多い。芸術スキルを生かして障害者の潜在能力を引き出している。

人気商品のこいのぼり。(右から)矢車飾り、吹き流し、真ごい、緋ごい、子ごいの5点1組で5万円前後するが、毎年250組が完売する

■美大出身者がサポート

「物作りをメンバーとともにすることで、私も一緒に成長できている感じ。もっと良い物を作っていける気がする」

機織りを指導する長谷部まり杏(あ)さん(25)は多摩美大でテキスタイルを専攻した。学生時代に雑誌で活動を知り見学。「製品の完成度が高く、私も学べることが多いのではないかと思った」。最初はボランティアで携わり、卒業後にスタッフとなった。

物作りの楽しさを実感する一方で、障害のあるメンバーに作業工程を理解してもらう難しさを感じることもある。それでも、「障害の特性は一人一人異なるので、日々、一緒に挑戦しているようなもの。特性は個性であり、大切にしたい」と話す。

染めの作業を行うメンバー。根気よく数回にわたって丁寧に染め上げる

■物づくりでつながる

「ラ・マノ」はスペイン語で「手」の意。施設長の高野賢二さん(43)自身も専門学校で染色を学んだ。「世の中と、障害者や福祉事業所の間には、まだまだ距離感がある。『手仕事による物作りで社会とつながる』という思いで活動している」と語る。

工房の前身は、障害児のための造形教室。現在は自立支援法の就労継続支援B型事業。一般就労が困難な障害者に生産活動の機会を提供し、能力向上の支援を行う福祉事業所だ。

仕事に携わる26人は障害の特性によって、藍染めなどの染めや絞り、機織り機を用いた織りや刺繍、さまざまな画材を使ったアート制作の3チームに分かれ、スタッフ20人がサポートする。就労は1日6時間、週5日。地域住民ら年間延べ1000人もボランティアとして手伝う。

染めの原料には天然染料を用い、敷地内でとれた植物を使うことも。約100点の製品で特に人気なのがこいのぼり。1組5万円前後と決して安価ではないが、毎年250組が完売する。アート作品も国内外での展示、販売のほか、企業から使用依頼が入るなど芸術性が評価されている。

機織り機で織る糸もメンバーの障害者が染めている=東京都町田市の「クラフト工房 La Мano」(寺河内美奈撮影)

■原点はピュアな情熱

アート制作を指導する朝比奈益代さん(51)は女子美大で油絵を専攻した。勤めていた雑貨店で製品に出合ったのをきっかけに、スタッフとなった。「個々の感性を引き出せるよう、どんな色や形に関心があるかを知るように努めている。作品が効果的に見えるよう画材の使い方は教えるが、個性をそがないよう作品自体への手助けはしていない」という。

メンバーの中には、こうした表現活動を通して人前で話せるようになった人も。「そうした成長をそばで見られるのが楽しい。アートの原点にあるピュアな情熱を一緒に体験することは、私自身の視野を広げてくれる」(朝比奈さん)

2年後には30周年を迎える。高野さんは「メンバーの適性とスタッフのスキルの組み合わせで、どんな物ができあがるかという面白さがある。クリエーティブな発想で熱意を持って継続していくことが大切。私たちの物作りで、多くの人が笑顔になれる仕組みを作りたい」と話している。

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