今、できることを~皆が「当事者」のwithコロナ時代~<4>

2021/03/12

首都圏では新型コロナウイルスによる緊急事態宣言が延長されました。長く続く自粛生活の中で、“孤独”に負けないためにも、心身の健康は大切! それに、もし今私が体調を崩しても子育てと仕事で忙しい妹を頼ることはできません。先日、健康診断の結果を受け取ってきました。実はちょっぴり不安もあったのですが、おかげさまで何の問題もなく、安心して足取りが軽くなった単純な私(笑)。寒さも少し和らいできたことだし…と、帰り道に少し寄り道をして春物の洋服を購入してしまいました。【コロナ禍でも「いつもと変わらない暮らし」を。認知症の人たちの「働きたい」をかなえるデイサービス…町亞聖さんコラム3回目はこちら

前回に続いて、認知症の方が生き生きと働き、ともに暮らせる社会を目指すデイサービス「DAYS BLG!(デイズ ビーエルジー)」のお話です。東京都町田市や八王子市でデイサービスを展開するDAYS BLG!では、企業などと協業し、スタッフと利用者からなる「メンバー」たちが洗車やポスティングなどの有償ボランティアを行ったり、子供たちが立ち寄る駄菓子屋さんを運営したりと、地域と利用者さんをつなぐサービスを行ってきました。新型コロナウイルスの感染拡大により、休止せざるを得ない活動もありましたが、メンバーさんたちの声を受けてデイサービスの提供は継続。できる限り「コロナ前の暮らし」を続けられるよう工夫しています。

◆「いつもの時間」「当たり前の暮らし」を守っていく発想の転換

DAYS BLG!では、今年から医療福祉団体のみなさんに感染症対策物資を届けるプロジェクトが新たにスタートしました。感染対策のためのガウンやマスクなどを梱包し、介護事業所に届けるというもので、もちろんメンバーさんたちが作業に当たります。

きっかけは昨年、DAYS BLG!に、たくさんの人から感染対策グッズが届けられたこと。その時に自分たちが感じた安心や喜び、感謝を他の人にもお裾分けしたいと、メンバーの皆さんで地域の小規模事業所にマスクなどを配布する有償ボランティアをすでに始めていて、他にも防護服作りにも挑戦しています。感染の不安におびえて活動を減らしてしまうのではなく、ピンチをチャンスに変えているたくましさに脱帽です。

認知症をテーマにした町さんのラジオ番組に出演したDAYS BLG!代表の前田隆行さん

もちろんDAYS BLG!では、医療の専門家を招いて勉強会を開いたり、メンバーには感染予防や体調管理に気を付けてもらうなどの対策をしっかりとしています。代表の前田隆行さんは、「誰がいつ感染してもおかしくない、と考え、感染対策を徹底すると同時に『いつもの時間』や『当たり前の暮らし』を守っていきたい」と話していました。

withコロナが長期化する中で、いつまでも“感染リスクゼロ”の対策を取り続けるのには無理があると私は思っています。大切な人とともに過ごす何気ない日常が、人生を豊かに彩り、明日への希望に繋がっていく…これは認知症の人だけでなく全ての人に当てはまることではないでしょうか。日常を取り戻すために必要なのは発想の転換です。

◆「このまま会えずに永遠の別れになるのか…」家族の悲痛な叫び

DAYS BLG!のように、コロナ前と「変わらぬ暮らし」を選択した介護事業所は残念ながら少ないのが現実です。外出できず、家族とも会えない日々は、高齢者にとって取り返しのつかない深刻な影響をもたらしています。できていたことができなくなる“負のスパイラル”に陥ってしまうのです。

「介護施設で暮らす義母が寝たきりになってしまいました。でも面会制限で会うことができません。もう義母のことはあきらめました…」

先日、知人の男性から私に届いたメッセージです。また、数年前から認知症の症状が出ていた別の知人は、コロナ前は何とか1人でバスに乗れたのですが、今は難しくなってしまいました。自分で電話をかけることも難しく、なかなか連絡が取れず、どんなふうに過ごしているのか…。直接会って話がしたいと切に願っています。

日本認知症学会が昨年5月、認知症の専門医を対象に行ったコロナによる外出自粛などの影響に関するアンケート調査では、認知症カフェなどの当事者や家族の集まりを中止したのは8割以上、デイサービスの利用が減ったとの回答も7割近くに上りました。また、認知症の人の認知機能のさらなる低下が認められると回答した医師は5割近くいるということが分かりました。この調査からすでに1年近くが経とうとしていますが、状況が改善されているとは到底思えません。

活動40周年を迎えた「認知症の人と家族の会」代表の鈴木森夫さんによりますと、家族と何カ月も会えない状況で認知症の症状が進んだり、このまま会えずに永遠の別れになってしまうなど、家族の悲痛な声がたくさん電話相談で寄せられているそうです。そうした認知症当事者や家族が取り残されないように、安心な環境下で認知症の人が介護を受けられるよう、体制整備などの配慮をして欲しいという要望書を、認知症の人と家族の会などが昨年10月に厚生労働省に提出しています。

 

◆「生きる」ことを支える介護現場を崩壊させないために・・・

コロナと向き合いながら“人間らしく”生きるためにできることはまだあるはず…と、この原稿を書いているところに在宅サービスを含めたすべての介護・福祉職にPCR検査とワクチンの優先接種を求める署名を集めよう、というメールが仲間の介護職から届きました。厚生労働省が2月に、コロナにより病院の病床がひっ迫しているため、自宅で療養する要介護高齢者への訪問介護サービスを続けるよう求める通知を出したにも関わらず、在宅介護サービスを提供する介護事業者がワクチンの優先接種から除外されているからです。
(編集部注:厚生労働省は3月3日に方針を変更。 市町村が感染状況などを踏まえたうえで介護サービスの継続が必要と判断し、かつ在宅介護サービス事業者と介護職本人が、感染者または濃厚接触者となった高齢者に直接接してサービスを提供する意思を示した場合に限り、優先接種の対象となる)

病院だけではなく介護現場でも、あきらめていい命は一つもありません。変わらぬ暮らしを守り「生きる」ことを支えている介護現場を崩壊させないために、「今できることは何か」を当事者の1人として考え抜きたいと思います。

【次回に続きます】
<1>コラムはこちら】
<2>コラムはこちら】

≪プロフィール≫
まち・あせい 埼玉県出身。小学生の頃からアナウンサーに憧れ1995年に日本テレビにアナウンサーとして入社。その後、報道局に異動し、報道キャスター、厚生労働省担当記者としてがん医療、医療事故、難病などの医療・介護問題などを取材。また北京パラリンピックでは水泳メダリストの成田真由美選手を密着取材。“生涯現役アナウンサー”でいるために2011年にフリーに転身。脳障害のため車椅子の生活を送っていた母と過ごした10年の日々をまとめた著書「十年介護」を小学館文庫から出版。医療と介護を生涯のテーマに取材、啓発活動を続ける。(公式ブログ→http://ameblo.jp/machi-asei/

≪出演番組≫
☆文化放送 毎週土曜あさ5時35分~5時50分
「みんなにエール!~障害者スポーツ応援番組~」
☆ニッポン放送 毎週日曜あさ6時25分~6時55分★HPで視聴可能
「ウィークエンドケアタイム「ひだまりハウス~うつ病・認知症を語ろう~」

フォローすると、定期的に
\ケアするWebマガジン『ゆうゆうLife』の更新情報が届きます。/

Facebookページをフォロー
Share
LINE