今、できることを~皆が「当事者」のwithコロナ時代~<3>

2021/03/05

新型コロナウイルスと向き合って1年以上になります。昨年は私も、人を集めることができず実際にお会いして話しをするリアルの講演会は全て中止に。ラジオなどの仕事は何とか続けられていますが、他愛もない話をしたりして過ごす友人との時間が持てないのはやっぱりさびしいもの。家に帰っても「おかえり」と迎えてくれる家族がいない独身の私。一番大きな課題は「この“孤独”とどう付き合っていくか」かもしれません。【高校3年のある日、母が倒れた。突然の介護、ヤングケアラーに…町亞聖さんコラム1回目はこちら

大切な人をコロナから守るため、一人ひとりがしっかり感染予防することが重要であることは言うまでもありません。とはいえ、感染症の終息には長い時間が必要なことは歴史が証明しており、制限の多い暮らしの長期化が及ぼす影響も深刻です。

数年前から一緒にボランティア活動をしている大学生たちも、昨年1年間は大学が閉鎖されてしまい、授業以外の学びや出会いが得られる機会を奪われてしまいました。また、私自身もこの間に大切な友人が何人か亡くなってしまいましたが、葬儀にも駆けつけられず、きちんとお別れをすることができませんでした。

ワクチン接種が日本でも始まりました。ですが、現代医学をもってしても未だ特効薬のないコロナに対して、医療には限界があることは明らかであり、医師の力だけで感染を終息させることはできません。病院が生命を守る最前線ならば、暮らしを守る最後の砦は介護現場です。今回と次回は生命を守ることに力を尽くしながら、コロナ前と変わらぬ当たり前の生活を維持することを決断した介護事業所を紹介したいと思います。

◆「居場所が必要」当事者の切実な声を受けて・・・

今年に入って首都圏など11都府県に2度目の緊急事態宣言が出されました(首都圏以外は2月末までに解除)が、宣言前から全国的に多くの介護施設で家族の面会は制限されたままです。介護事業所には、コロナ禍でも必要なサービスの継続が求められていますが、現場では利用者やスタッフの密接は避けることができません。介護現場で働くスタッフは、コロナにかかると重篤化しやすい利用者のために、まずは自分自身が感染しないためにプライベートを削り、一緒に暮す家族との接触も避けるなど、常に緊張を強いられながら職務に当たっています。

そんな中で東京都町田市や八王子市などでデイサービスを展開しているDAYS BLG!(デイズ ビーエルジー)は、利用者からの切実な声を受けてコロナ前と変わらぬ暮らしや活動を継続することを決断しました。

DAYS BLG!は、認知症の人の“働きたい”“役に立ちたい”“社会とつながりたい”という想いを叶えるデイサービスとして注目されています。こうした理念を理解してくれる企業の協力を得て、利用者の皆さんは有償ボランティアとして自動車ディーラーさんのところで洗車をしたり、地域新聞のポスティングの仕事をしたりして働いた対価を(少ないながらも)きちんと受け取っています。

このデイサービスのもう一つの特徴は、スタッフと利用者がお互いに「メンバー」と呼び合っていること。それは「介護する側」「介護される側」ではなくDAYS BLG!に集う対等な「メンバー」として、お互いにできることをして支え合おうという考えに基づくものです。

デイサービス「DAYS BLG!はちおうじ」の代表、守谷卓也さんにお話を伺ったところ、感染が拡大する中で介護サービスを続けるかどうかやはり悩んだそうです。ですが、メンバーさんから「認知症の症状が悪化してしまうのではないか」「ずっと家にいると精神的に参ってしまう」「デイサービスの仲間に会えなくて寂しい」という声が上がりました。

DAYS BLG!を”居場所”として必要としているメンバーさんたち=当事者たちの声が、守谷さんたちの背中を押してくれたのです。メンバーさんの家族から心配する声もありましたが、最終的に「自分のことは自分で決めたい」という本人の意思を家族も尊重してくれたそうです。

◆「“今”何が出来るのか」メンバーと一緒に考えるDAYS BLG!

認知症の当事者が言われる「生きづらい」ことや「生活しにくい」ことは、どういうものでしょうか。
それは自らの意志とは関係なく、自らが望んでいない生活を余儀なくされること、また社会や環境が整備されていないことなどです。
でも、誰もが一度は「生きづらさ」を感じたことがあるのではないでしょうか。
「生きづらい」ことや「生活しにくい」ことは、認知症の人に限らず、誰もが感じることです。
だからこそ私たちは“認知症を自分事”として考え、一人ひとりが人生の主人公でいられるような社会や環境を共に創造していきます。
DAYS BLG!公式サイトより)

「“認知症を自分事”として考える。自分のことは自分で決める。」普段から実践していたこの理念がコロナ禍でも活かされました。DAYS BLG!では、その日に実施するメニューを利用者であるメンバーさん自らが選択しますが、コロナの中でもそれも変わりません。

町田市に隣接する「こどもの国」(横浜市)にてベンチ掃除の社会活動中のDAYS BLG!のメンバー

ある日のこと、メンバーさんから「コロナの影響でDAYS BLG!への参加を控えている人に会いたい」という声が上がったことがありました。そこで、その日はその方とご家族、ケアマネージャーに許可を得て、そのメンバーさんを訪問することをデイサービスの活動にしたそうです。

コロナ禍でも、ただリスクを避けて萎縮するのではなく、「”今”、何ができるのか」をメンバーさんと一緒に考えることを大切にしていることが伝わるエピソードです。参加しているメンバーさんたちは、できる限りいつもの定食屋で昼食をとり、熱い夏にはみんなで温泉に行き一汗流し、秋には近所の庭で柿狩りをし、農園で収穫した栗で栗ご飯を作り、今年のお正月には初詣にも出かけたそうです。

こうしたコロナ前と「変わらぬ暮らし」は、スタッフ、利用者さんを合わせたメンバーさんとそのご家族全員の間に築かれた信頼関係と、地域の方々の理解によって実現しているのです。

【次回に続きます】

≪プロフィール≫
まち・あせい 埼玉県出身。小学生の頃からアナウンサーに憧れ1995年に日本テレビにアナウンサーとして入社。その後、報道局に異動し、報道キャスター、厚生労働省担当記者としてがん医療、医療事故、難病などの医療・介護問題などを取材。また北京パラリンピックでは水泳メダリストの成田真由美選手を密着取材。“生涯現役アナウンサー”でいるために2011年にフリーに転身。脳障害のため車椅子の生活を送っていた母と過ごした10年の日々をまとめた著書「十年介護」を小学館文庫から出版。医療と介護を生涯のテーマに取材、啓発活動を続ける。(公式ブログ→http://ameblo.jp/machi-asei/

≪出演番組≫
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「みんなにエール!~障害者スポーツ応援番組~」
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