介護の仕事はカッコいい。介護にプライドを

2020/12/25

こぶしを天に突きあげる男性、額縁の中で優しく微笑む女性…。ポートレートのモデルはプロに見えるが、実は全員が介護現場で働く介護職らだ。写真をモノクロで撮影したのは、色がもたらす情報をそぎ落として、介護職の内面を伝えたかったからだ。介護の魅力を発信するプロジェクト「KAiGO PRiDE(介護プライド)」をプロデュースするインド出身のクリエイティブ・ディレクター、マンジョット・ベディさん(51)が撮影した。「介護の仕事はカッコいい。日本が世界に誇ってよい技術だ。アートの力で介護職の方々に自信を持とうと伝えたかった」とマンジョットさんは訴える。

マンジョットさんが熊本県で撮影した作品の数々。モデルは全員が介護職だ(KAiGO PRiDE 提供)

■きっかけは認知症カフェだった

マンジョットさんはインド・ニューデリーで4人姉弟の長男として生まれた。外交官の父の仕事で2歳から世界各地を巡り、17歳のときに父と来日。そのまま日本の大学に進学、宣伝広告の道へと進んだ。これまでトヨタ自動車のCMや、伊勢神宮の式年遷宮のプロモーションなどを手掛けてきた。

介護との出会いは約10年前。知人の女性が実家の熊本県の介護事業所を継いだことなどから関心が高まった。平成27年、その女性から常設型の認知症カフェ「as a café」のプロデュースを頼まれ、福祉の現場も知るように。気づいたのは、必要とされているはずの介護が賃金も含めて正当に評価されていないというギャップだった。

「広告は課題を解決するため、言葉や写真、映像といったコンテンツの力を使う。約30年間、広告業界にいましたから、クリエイティブの力で介護の課題解決の役に立ちたかった」とマンジョットさんは話す。

マンジョットさんが熊本県で撮影した作品の数々。モデルは全員が介護職だ(KAiGO PRiDE 提供)

■自分自身にプライドを

2025年には団塊の世代が全て75歳以上の後期高齢者になる。ニーズは増えているが介護の人材確保が追い付いかず、国は34万人の介護職が不足すると試算している。

「きつい」といったイメージから親に介護の仕事につくことを反対されたり、自身が介護職であることを公にしなかったり、介護職自身が仕事に自信を持っていないことを知った。「このギャップを解決するには、介護職が自らリスペクト(尊敬)して介護の魅力を発信する必要がある」と感じたという。

「介護の日」のイベントで平成30年に熊本県で講演をしたのを機に、国の「介護現場革新会議」のパイロット事業の一環で介護のポートレート、動画を撮影する「KAiGO PRiDE(介護プライド)」と名付けたプロジェクトを熊本県で実施した。

熊本市で行われた撮影風景(KAiGO PRiDE 提供)

■1枚の写真に詰まった思い

令和元年、熊本県内3か所6回に分けて写真、動画撮影を行った。呼びかけに応じたケアワーカーらは最初、緊張でこわばっている。それをインタビューしながらほぐして撮影するのに一人45分~90分かけたという。

心に刺さったケアワーカーの女性の言葉がある。「(私たちの仕事は)右も左もわからない不安なときに方向を示す灯台になることです」。昼間は自分の意思を言わない入所者も、夜中は気持ちを吐露することがある。夜中に入所者が起きた気配でそばに行くと、ほっとした表情で「ありがとう」と言われたという。

■日本のKAIGOは世界に

マンジョットさんは広告の仕事で世界を飛び回る中、海外の飛行場で過労で倒れて病院に搬送されたこともある。身体を持ち上げられたとき、動物のように強く引っ張られたこともあったという。マンジョットさんは「日本ではありえない。日本の看護や介護がいかに素晴らしいかという思いを強くした」という。「日本の介護はKAIGOとして世界にも通用する」と話す。

「介護には夢がある。カッコがいいという意味は見た目ではなく、優しさであり、心。KAiGO PRiDEの『i』を小文字にしたのは『私(I)』と『愛』をかけています」と話す。

東京都品川区や世田谷区、山口県などで予定していた写真展は、新型コロナ感染拡大の影響で延期になったが、全国にプロジェクトの輪を広げていきたいとしている。

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