認知症でも「自分らしく」 竹林プロジェクト

2020/12/03

新型コロナウイルスの流行が再燃し、高齢者の体操教室や茶話会などの地域活動の実施が再び困難になっている。一方で、集いの場や外出の機会が減れば、高齢者の身体機能や認知機能の低下も心配される。工夫して活動を続けるグループを訪ねた。

■対等な関係を築く

秋の日の午前、東京都町田市の竹林に、「HATARAKU認知症ネットワーク町田」のメンバーらが、集まった。

週1回、認知症の当事者と、支える仲間が集まる。この日は当事者3人を含む計約10人が伐採された竹を粉砕したり、チップを地面にまいたりした。遊びに来た子供たちが安心して竹林の中を走れるように、だ。

名付けて「竹林プロジェクト」。これまでも、この竹林で下草刈りをしたり、門松やベンチ、竹炭を作ったり。春にはタケノコ収穫祭も行った。参加者も事業内容もさまざま。介護保険のサービスではないから、要介護でない人も、ボランティアや親子連れや見学者も自由に集う。

仕掛けたのは、同市に住む自称「まちのおばちゃん」、松本礼子(あやこ)さんだ。認知症の人に戸外で活動する場を提供したいとスタートした。

松本さんは、介護保険の小規模デイサービスを運営する。70歳過ぎて新たに取った資格もあるが、「認知症や要介護の人と対等な関係を築ける」(松本さん)と、以前から持っている介護福祉士の資格が気に入っている。

粉砕したチップを地面に敷きながら、おしゃべりをするメンバーら

■自分らしく生きる

晩秋のひんやりした風がササの葉を揺らす。松本さんが「一休みしよう。お昼になったよ」と声をかける。昼ご飯は、有機農家を営む青木瑠璃さん(50)がコンロを持ち込んで作ったほうとうだ。

当事者の一人、岡本寛治さん(79)がチェーンソー用ヘルメットを脱いで言った。「汗をかいた。でも、そのぐらいがいい。夜、ぐっすり眠れる」

岡本さんは美大出の元グラフィックデザイナー。認知症があり、要介護2の認定を受けているが、「少し忘れっぽい方が、人間らしくていいでしょう」と前向きだ。「働くことは大好き。昔は小田急ハルクの仕事もしたんだよ。物づくりは優秀な方だったし、こうして働いていると元気でいられる」

他の参加者も竹を粉砕したり、チップを敷いたり、できる業務に携わった。

松本さんも、「こういうときは男手が頼りになるわ。これだけチップを敷けば、子供が転んでも大丈夫ね」とねぎらった。

借りてきたマシンで竹を粉砕する岡本寛治さん

■それぞれが得意分野で

活動の発端は、松本さんが介護事業のかたわら始めた「認知症の人とともに歩む本人会議」。当事者が体験を共有したり、不満を分かち合ったり、元気を取り戻す場だ。

だが、室内の活動にとどまらず、戸外が好きな人には外で体を動かせる場があった方がいい、と考えた。町田市に趣旨を説明し、竹林を貸してもらった。

背景には、既存の介護サービスへの疑問がある。松本さんは「若いときだってお互いさまで生きているのに、認知症と診断されたら『危ない』とか『出歩かないで』とか言われて、自分らしく過ごせなくなる。ここは決まりがないから、毎回、小さなドラマが生まれる。それがすごく大事」と訴える。

■美的センスが頼り

この日、参加した認知症の当事者らは、いずれも要介護の認定を受けている。だが、みんな介護サービスを利用しているときとは違った表情を見せる。

新型コロナの流行で、どこも活動が困難になっているが、竹林の中なら「密」にはならない。今は伐採した竹をしゃれた箸にできないか検討中だ。収入が出れば参加者に還元できる。岡本さんの美的センスが頼りだ。

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