子連れ出勤も自然な風景=銭湯でデイサービス
育児と仕事の両立は働く親にとって大きな課題。だが、介護事業所の中には、子連れ出勤OKな施設もある。銭湯を経営する「新井湯」の介護事業「湯~亀(き)グループ」(東京都品川区内)も、そんな職場。子供がいることで、職員にも利用者のお年寄りにも自然に笑顔が生まれている。
事務所の一角にはベビーベッド。赤ちゃんをおんぶして働くスタッフ。会議中、社長の膝に乗って遊ぶ子供。湯~亀グループの事業所では、職場に子供がいるのはおなじみの風景だ。
「今日は赤ちゃん、どこにいるの?」
「保育園だよ」
利用者とスタッフで交わされる会話にも、子供の話題が自然にのぼる。
新井湯の松井眞美・介護事業部長は「介護事業を始めた当初から、ヘルパーは子育て中の方がメイン。だから、最初から子供を職場に連れてきていいよ、という方針です」と説明する。
同社の母体は、昭和27年に創業した銭湯「新生湯」。地域の高齢化が進む中、お年寄りにも広いお風呂を楽しんでもらいたいと銭湯営業の傍ら、平成15年に「デイ・サービスセンター湯~亀」をオープンした。
スタッフは、ほとんどが子育て経験者。松井さんは「家族ぐるみで職場に出入りしても大丈夫。子供だけでなく、旦那さんが来てくれてもいい。むしろ、お母さんの働く背中を見てほしい」と頼もしい。

■職場に子供、当たり前
介護福祉士の涌本(わくもと)亜友美さん(30)は、今は総務の仕事を担当する。デイサービスの管理者などを務めていたが、おととしの8月に、長男の蒼太朗ちゃん(1)を出産。その年の12月に復職した。「もともと仕事が好きだし、これまでも、みんなが子供を職場に連れてくるのを見ていたので、子連れの復職は自然な流れでした」と振り返る。
職場には、子育てを経験した先輩がたくさんいる。「初めての子育てで分からないこともあるけれど、みんながいろいろ教えてくれるんです」と涌本さん。

■シフト管理で情報共有
子供の急な病気など、早退や欠勤に対応する仕組みも整っている。
たとえばシフト。湯~亀グループでは、デイサービスや訪問介護など8事業所を展開する。介護職のシフトは、全事業所を1枚のシフト表で管理する。シフト表には、介護に携わる時間のほか、休憩時間も記載。急な欠勤や早退は、これをもとにSNSで調整し、人繰りをする。
松井さんは「1事業所だけで急な早退や欠勤を埋めるのは難しい。複数事業所の勤務を、1枚のシフト表で管理するから調整できるし、安心して働ける」と説明する。
職場復帰後、子供を保育園に預けた涌本さんだが、お迎えに行った後で会議や打ち合わせがあれば、子連れで職場にやってくる。「小さいころから、多くの人と関わっていたせいか、息子も人見知りしなくなりました」。子育てに理解のある職場環境が、働く人にも安心感を与えているようだ。
