40代の転身=パートから正社員に
介護職には、異業種から転身し、40代、50代で資格を取る人も少なくない。若い頃はパートの仕事も多いが、ある年齢にさしかかると、仕事が思うように入らなくなることも。正社員で長く働ける魅力に惹かれ、介護職になった女性に話を聞いた。
介護付き有料老人ホーム「アズハイム中浦和」(さいたま市桜区)のケアリーダー、吉岡美香さん(47)は、介護研修での講師の言葉を仕事の糧にしている。
「今日会った利用者さんは、明日にはいないかもしれない。だから、声をかけられたとき、『明日ね』って言ったらだめなんだよ」

■「シフトに入れない」
吉岡さんは高校卒業後、まもなく結婚。3人の子供に恵まれた。パートで働くことが多く、30代半ばからはJR駅構内の菓子店で販売員を勤めていた。
やりがいを感じていたが、会社の方針で勤務日数が減り、思うようにシフトに入れないことも。40歳を迎える頃には「キャリアを積みたい、正社員として働きたい」と考えるようになっていた。
そんなときに介護の仕事に出合った。寝たきりの義母宅で介護職の仕事ぶりに感銘を受けたのだ。「長く働ける」「年齢は関係ない」というイメージも背中を押した。41歳で介護の基本的な資格「介護職員初任者研修」を取得した。

■生活が楽しくなる工夫を
初めて介護業界に飛び込んだのは6年前だ。自宅近くにある介護付き有料老人ホーム「アズハイム中浦和」でパートとして働き始めた。「こんにちは、と声をかけても、その後、どう会話をつなげていいか分からなかった」と振り返る。
だが、もともと人に喜んでもらうのが好き。施設内で手芸サークルを作ったり、入居者の爪のカラーを塗り直したり。入居者の気分が上がる工夫を取り入れる楽しさがあった。
入居者にはいろいろな人がいる。ある60代の女性は当初は心を閉ざしていた。
根気よく声をかけていると、あるとき、「昔の写真なんだけど…」と写真を見せてくれた。女性がアパレル業界で働いていた時代の1枚。きっと、人生で一番輝いていたときのものだ。何度も同じ写真を見せられ、その度に女性の話をじっくり聞いた。
その結果、一緒に外出できるほど心を開いてくれた。「働きかけで相手も変わる。気にかけていると伝わると、心が開くのかな」(吉岡さん)。
2年前には、介護の上級資格にあたる「介護福祉士」を取得。今は正社員だ。40代でのキャリアチェンジ。「勇気が必要だったけれど、まずは1カ月、次は3カ月を目標にしました」。人間相手の仕事だけにやりがいも大きい。「同じ1日はない。入居者が良い方向に変わっていくのを見るのが喜びです」という。
