飼い犬の小春との暮らし、母の生活を元気に=柴田理恵さんの連載エッセー〈7〉

3月に入ってから、
着実に春が近づいていることを感じて、うれしくなります。
この冬、母は施設で過ごしました。富山は雪が積もるところです。
雪かきも大変ですし、寒さはお年寄りにはこたえますから。
富山の家ではずっと犬を飼っていました。
本当に孫のような存在で、両親ともに可愛がっていました。
ある時、飼っていた犬が亡くなって、父が歩かなくなってしまいました。
歩かなくなると人間は弱ると言いますが、本当です。
父は散歩に行かなくなって、口数も減り、ぼんやり過ごす事が多くなりました。
これはだめだっていうことで、
ミニチュアダックスとトイプードルのミックスを飼い始めました。
名前は小春。
父が将棋好きなので、映画の「王将」から名前を付けました。
主役の棋士、坂田三吉の女房の「小春」です。
やんちゃでかわいい女の子でした。
父は小春を可愛がり、また散歩をするようになって、よく喋るようになり、
元気を取り戻しました。
母ももちろん小春をとても可愛がっていました。
父が亡くなった後は、小春が母の支えでした。
散歩をして、ごはんをあげて。
すごくかわいがっていたんです。
■母の入院をきっかけに我が家に
でも、母が平成29年の秋に、腎盂炎で入院したのをきっかけに、
私が引き取る事になりました。
小春を飼い始めたときには、父も母も既に高齢だったので、
最終的には東京の我が家で引き取る覚悟を決めていたし、
自然な流れでした。
うちには、晴太郎という犬がいたので、
小春がきたことで、にぎやかになりました。
母には毎日の電話で小春の事も報告しました。
「あんたんちで、ちゃんといい子でいてくれてうれしい」
って言っていましたね。
私が富山に帰るときには、晴太郎と小春を連れて帰りました。
小春も母に会うと嬉しそうでした。
その小春が昨年12月に突然亡くなりました。心臓の病気でした。
小春が亡くなったのを伝えると、
母は驚いてとても落ち込んでいました。
長生きをするという事は、幸せな事ですが、
沢山の親しい人を見送るということでもあります。
辛い事ですが仕方のない事です。
やはり母は生きていくという事を私に教えてくれているのだと思います。
地元富山の人たちに支えられての遠距離介護を綴ります
テレビや舞台で大活躍する女優の柴田理恵さん。90歳になる母の須美子さんは、今も富山県で地域の方々に見守られながら、元気に一人暮らしをされています。長年、小学校の先生をされてきた須美子さんは、とにかく明るくて、気っぷのいい性格だそう。そんな須美子さんですが、2017年の秋に体調を崩して寝たきりになり、一時は「要介護4」の認定を受けたこともあります。そこからどうやって現在の元気な毎日を取り戻したのでしょう? 須美子さんの奮闘を励まし、見守った日々のほか、さまざまな思いを綴ります。
※第7回は3月18日に更新予定。
5月からWAHAHA本舗全体公演「王と花魁」に出演予定
しばた・りえ 1959年、富山県出身。明治大学文学部卒業後、劇団東京ヴォードヴィルショーを経て、84年、WAHAHA本舗を設立。劇団の中心メンバーとして舞台で活躍するかたわら、映画やテレビドラマ、バラエティー番組、CFなどに幅広く出演。5月からWAHAHA本舗全体公演「王と花魁」(http://www.wahahahompo.co.jp/stage/koen/zentai/thegreatestkabuki/)に出演予定。