富山は高齢者に優しい町 90歳の1人暮らしを支えてくれるのは?=柴田理恵さんの連載エッセー〈4〉

2020/02/05

■1人暮らし 雪かきどうする?

今年は冬になっても、暖かい日が続いていますね。故郷の富山も、今年は、元旦にちらっと降っていたくらいです。いつもの冬だと、何十センチって雪が積もることもあるんですけどね。

富山の人は、雪が降るとすぐに雪かきをします。放っておくとどんどん積もってしまうから。私たちは、冬は雪かきが習性のようになっているんです。雪が降り出すと、80歳でも90歳でもついスコップをもって外に出てしまう。うちの母もやっぱりそうです。
でも、それは「やめてくれ」って言っています。
常日頃から「ころぶな」って注意しているんですが、雪の時期は特に危ないですから。

じゃあ、一人暮らしの母が雪かきをどうしているのか。
隣近所の人が手伝ってくださるんですよ。ありがたいことです。
自分の家の前を雪かきしたついでに、
「大丈夫?」って母のところに来てくれて。
私の友達も「ああ、ずいぶん積もっているな」
「おーい、雪おろしておくぞ」
って、車にスコップを載せて訪ねてくれる。

地域の方に助けていただいていることは、ほかにもあります。
たとえば、ごみ。家の外にごみ箱を隣のあんちゃんが見てくれる。
「俺たちがついでに収集所に持っていってやる」
「生ごみ出しておかれ」。
うちの母だけでなく、そうやって支えられているお年寄りはたくさんいるみたい。
昔は、一人暮らしのお年寄りもいなかったでしょう。最近できた習慣だと思うんです。
誰がいつやるって決まっているわけではない。
ちょこちょこっと誰かが来てくれる。富山ってそこがいいところですよね。

■怒鳴って健康?

母は、もともと富山の八尾町に生まれ。そこで育っている。小学校の教員もしていました。小さい町なので、親戚もいっぱいいるし、お友達もいます。
母に何かあるとすぐに電話してくれる人がたくさんいて。
「病院に行かなくちゃだめだよ」
とか、直接母を説得してくれる人もいる。

特に、地元にいるいとこは、母を気にかけてくれています。
用があったらお互いに連絡を取り合っています。たとえば、「お母さんの携帯電話の着信音が短いから、今度会ったときに設定しておいて」と頼むと、やっておいてくれる。

私はというと、母とは毎日電話で話しています。
「天気どう?」
「何食べた?」
「今日誰がきた?」
ぼけ防止です。細かい日常の話をしています。
電話をしている時間は短いけれど、毎日同じようなことでも連絡するのは大事なこと。
 
父がいたときには、お互いにしゃべる相手がいたからいいんです。
しゃべる相手がいないっていうのはほんとうによくないこと。

今でこそ、超元気な母ですが、父が亡くなったときはがっくりきていました。
「さみしい、さみしい」って言っていたんですよ。
父とはほんとうに仲が良くて。二人でよく仕事帰りに富山の居酒屋に行ってお酒を飲んでいました。でも、ものすごく喧嘩して、日々怒鳴りあいでしたけれど(笑)
大きい声で喧嘩するのが健康の秘訣だったのかな。

 

地元富山の人たちに支えられての遠距離介護を綴ります

テレビや舞台で大活躍する女優の柴田理恵さん。90歳になる母の須美子さんは、今も富山県で地域の方々に見守られながら、元気に一人暮らしをされています。長年、小学校の先生をされてきた須美子さんは、とにかく明るくて、気っぷのいい性格だそう。そんな須美子さんですが、2017年の秋に体調を崩して寝たきりになり、一時は「要介護4」の認定を受けたこともあります。そこからどうやって現在の元気な毎日を取り戻したのでしょう? 須美子さんの奮闘を励まし、見守った日々のほか、さまざまな思いを綴ります。

※第5回は2月19日に更新予定。

5月からWAHAHA本舗全体公演「王と花魁」に出演予定

しばた・りえ 1959年、富山県出身。明治大学文学部卒業後、劇団東京ヴォードヴィルショーを経て、84年、WAHAHA本舗を設立。劇団の中心メンバーとして舞台で活躍するかたわら、映画やテレビドラマ、バラエティー番組、CFなどに幅広く出演。5月からWAHAHA本舗全体公演「王と花魁」(http://www.wahahahompo.co.jp/stage/koen/zentai/thegreatestkabuki/)に出演予定。

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