子ども食堂で地域とつながり

2021/08/27

顔の見える福祉施設に―。栃木県宇都宮市の障がい福祉サービス事業所「コミュニティサポートセンターひかり」が、地元の子どもたちに食事を提供する取り組みを続けている。週に1回、施設の一部を開放して「若草ひかり食堂」を開設。所属の栄養士が腕を振るう。昨年来のコロナ禍で食堂は休止中だが、引き続きお弁当を提供。息の長い活動を通じてスタッフも地元に溶け込み、「相互理解」に役立つ試みとして注目されている。

コロナ禍で食堂はお休み中だが、心を込めてお弁当作り

◆食堂オープンが相互理解へ

「食堂を始めるまでは、ここにはどういう人がいて、何をしているか分からないとか、近寄りがたい感じとかもあったようです。それが、職員はこんな人で、こういう施設で、と分かってもらえるようになったのかなと思っています」

そう話すのは社会福祉士の山口綾佳さん(33)。同施設は社会福祉法人同愛会が運営する多機能型事業所で、障がい者の就労支援や生活介護などを行っている。利用者は約40人。平成25年のオープン時から勤務する山口さんは、「福祉施設で地域社会に貢献したい」という思いを持っていた。栄養士の加藤恵さん(40)らとプロジェクトを立ち上げ、29年5月に子ども食堂の開設にこぎつけた。

施設長の社会福祉士、伊藤淳一さん(48)によると、社会福祉法人は地域への貢献を求められている。「障がい者支援だけではなく、子どもたちの居場所づくりなどで枠を広げたいね、とスタッフと話し合っていた」。地元の自治会からの「学習支援をやってほしい」とのリクエストが開設を後押ししたという。

オリンピックに合わせてこの日は「ひかりんぴっく弁当」を準備。盛り付けをする栄養士の加藤恵さん

◆仕事の魅力も発信

もともと、利用者に昼食を提供しているので、食堂は取り組みやすい事業だった。毎週水曜の夕方から、勉強や遊びの時間のあと夕食を提供(参加費大人200円、子ども100円)。近くにこども園があり、当初は未就学児とその保護者の利用が多かった。「ずっと来てくれている子どもたちがどんどん大きくなる。赤ちゃんだった子が話をするようになったり、お兄ちゃんお姉ちゃんは配膳の準備を手伝ってくれるようになったり。元気をもらいますね」

実は山口さん、保育士と介護福祉士の資格も持っている。「仕事は障がい者施設を選んだんですが、心のどこかに保育士の自分もいて(笑)。資格を生かせてよかったです。子どもの中には、『ここでお昼は何してるの』とか『どんな人が来るの』とか、私たちの仕事に興味を持ってくれる子もいる。こうやって福祉の仕事の魅力を伝えていくこともできるんだなって感じています」

地元の食材も使って「食育」にも気を配る

◆当たり前の存在として

食堂を通じて、地元とのつながりも深まった。最近では、スタッフが地域のまちづくり会議に誘われたり、自治会の運動会やお祭りへの参加を頼まれたりすることも。「健常者、障害者という区分けを抜きに、地域での存在意義を考えることが大切。施設になじんでもらえれば、あって当たり前のものとして偏見も少なくなる。職員がいろんなスキルを持つことで、住民や利用者にいろいろなものを還元できる」(伊藤さん)

「今日のご飯なに?」と顔馴染みの子どもたちが駆け寄る

近隣の社会福祉法人が見学に訪れるなど、注目を集めるように。県内の姉妹法人でも子ども食堂がスタートするなど、広がりもみせていた。ただ、コロナ禍で昨春から食堂は開けず、今は水曜夕方、希望者に弁当を提供している。

この日のメニューはハンバーグ、ジャーマンポテト、冷製ポテトスープ、オレンジ。オリンピックに合わせて5色にするつもりだったが、食材の関係で難しかったそう。「ごめんね、って感じなの」と加藤さん。だが、気持ちはきっと伝わっている。あいにくの雨だったが、玄関で出会った子どもたちははしゃいで走り回る。子ども2人を連れた保護者は「週一食でも助かっています。子どもは友達と会えるし、親も子育ての相談ができるし、こういう場所があるのは本当にありがたい」と話していた。

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