黒木瞳さん 介護と介護のおしごとを学ぶトークライブ開催
介護は誰もが遅かれ早かれ直面する問題。産経新聞社は、女優の黒木瞳さんをメインゲストに迎え、11月4日に無料オンラインイベント「黒木瞳さんと学ぶ介護のおしごと」を開催した。団塊の世代が75歳を超える2025年には介護を担う人材が40万人も不足するといわれる中、現場をよく知る方々と介護に関心を持つ方々をつなぎ、仕事への理解を深める場となった。
■介護の現場を知るベテランの声
今回のイベントは、東京都内のホテルから、全国に向けてオンラインでのトークイベントとして実施。黒木さんのほか、介護現場で働く女性介護福祉士2人が実体験から介護の仕事について語り、やはり介護の経験を持つ元日本テレビアナウンサーで、現在はフリーの町亞聖(あせい)さんが進行役となり、1、2部各1時間のトークイベントに合計で約400人が視聴した。出演者は準備時間も含め7時間の長丁場となったものの、中身の濃いトークが展開された。
この日は、ともに介護現場をよく知る2人が登場。社会福祉法人こうほうえんヘルスケアタウンむかいはら(東京都板橋区)の矢新(やしん)道子さん(61)と、SOMPOケアそんぽの家S大泉北(同練馬区)の下田悦子さん(49)が介護の仕事について、専門用語などは使わずに分かりやすく語ってくれた。
もともとは保育士として働いていた矢新さんは、2000年の介護保険制度スタートの前、今から27年前に鳥取から夫と共に上京し、介護の世界に転身したという。
当時を振り返って矢新さんは「始めは混乱することもありましたが、人とかかわるということでは保育も介護も同じ」と語り、介護福祉士だけでなく、ケアマネジャーの資格を取得するなどしてキャリアアップ。今は施設の介護課長として活躍しているが、その間、家事・育児と仕事を両立するなどしてきた。
下田さんは、墓や仏壇販売の営業職からの転身。母親が介護の仕事をしていたのを見ていたことも影響していたそう。それでも、「やはり、排せつのケアができるかどうかの不安がありました。現場に入ってすんなりとやれて、できるもんだな…と思いました」。営業職時代に高齢者と接し、話すことにも慣れていた、という。
仕事へのやりがいや意義については、矢新さんは「徘徊など、行動に障害のあるような方でも、いろいろと関りができると、変化が出てきて笑顔を見せるようになります。そうした点に介護の魅力を感じます」と説明する。下田さんは「やはり人の役に立てる仕事だという点ですね。利用者さまの元気な顔を見られることが幸せだ、と感じます」と胸を張る。
■母の笑顔は神様の贈り物 黒木さん
2人の話を聞いた黒木さんは「みなさん、仕事に誇りを持っていらっしゃるんですね」と言い、「お客様に元気になってもらえる、ありがとう、と言ってもらえる―。それは私たちエンターテインメントの仕事も同じだと思います」と共感を語った。
数々の映画やドラマ、舞台に出演した日本を代表する女優である黒木さんだが、近年は映画監督としても実績を重ね、11月6日には長編2作目の「十二単衣を着た悪魔」が公開された。2018年にはフジテレビ系ドラマ「黄昏流星群」で父母の介護に人生をささげた独身女性を好演したが、自身も母親がくも膜下出血で倒れ入院した経験を持つ。遠距離介護とは言えないまでも、母親の入院した地元・福岡の病院に通った当時の思いを振り返った。
「意識がない状態でも、私の歌のCDを病室でかけて聞いてもらい、顔を見たり、触ったり、いっぱい話しかけました。私が冗談を言ったら、声を上げて笑ったんです。脳の何かがつながり、私の話が通じた瞬間でした。その翌日に亡くなりました。母の元に通ったのは半年間でしたが、あれは神様がくれた贈り物だと思いますね」
司会進行の町さんは多くの介護現場を取材してきたスペシャリスト。18歳から10年間にわたり、実母の介護を担い、仕事と両立された経験がある。それぞれが、介護の〝リアル〟を語りながら、介護の仕事への理解と共感を深めるトークイベントとなった。