介護の世界はワクワクがいっぱい

2020/11/07

「介護はワクワクがいっぱい。そのことを介護者自身が発信することが大切」
10月15日にオンラインで行われた「介護付きホーム研究サミット2020」の特別講演でゲスト出演した熊本県介護福祉士会会長、石本淳也氏(49)は訴える。
石本氏は熊本県出身。高校卒業後、バンド活動のために福岡に転居し、見つけたのが特別養護老人ホームでの事務の仕事だった。「電話応対ぐらいはできると甘く考えていた。体格がいいからと介護の現場に行きましたが、本意ではなかったんです」と苦笑する。

オンラインで行われた「介護付きホーム研究サミット2020」の収録スタジオ(スクリーンショットより)

◆元ヤクザの介護

施設で入所者の世話にあたったが、慣れぬ仕事で、食事介助も恐る恐る。心通わせた人との永遠の別れはつらかった。

背中に般若の入れ墨をした元ヤクザの認知症の男性もいた。こわもてで、ふるまいも乱暴なトラブルメーカーだった。

担当として白羽の矢が立ったのが石本さん。対応に苦慮したが、「兄貴」と呼びかけるようにしたら、心を開いてくれるようになった。「毎日、新聞を読むインテリだった。こわもてだが魅力があり、介護の成功体験にもなった」

しかし、みんなで予定していた旅行の1週間前、突然倒れて石本さんの腕の中で息を引き取った。号泣した。

「介護付きホーム研究サミット2020」に参加した優秀事例の表彰者ら(スクリーンショットより)

◆人を幸せにする仕事

「それでも、かけがえのない出会いがワクワクを与えてくれる。まさに人生道場でした」と話す。

転機となる上司にも出会った。「ジャージがあたりまえではいけない。外に出るときはジャケットを着なさい」と、社会人としてのふるまいを教えられた。上司は男性モデルの経験もある異色の存在だったが、介護の世界に「窮屈さ」を感じていた石本さんには指針になった。

石本さんは2019年まで、介護専門職の組織「日本介護福祉士会」の会長を務めた。「介護はきつい、給料が安いと言われ、人手不足が社会問題になっている。でも、実は私たち自身がネガティブキャンペーンをしてきた。本当にそうなの?と問い直したい。介護は人を幸せにする仕事。日本の介護は専門性も高く、世界でも通用します」と力をこめる。

 

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一般社団法人「全国介護付きホーム協会(介ホ協)」(東京)は10月15日、「介護付きホーム研究サミット2020」を開催、全国の加盟施設から選んだ10の優秀事例を発表した。

グランプリには、ソーシャルメディアで家族に介護記録を「見える化」している「ウェルフェア三重みっかいち」(三重県鈴鹿市)が、準グランプリには、全職員の有給休暇取得100%を実現した「そんぽの家吹上」(名古屋市昭和区)が決まった。

また、介護職のポートレートや動画を通じて介護の魅力を発信する「KAiGO PRiDE(介護プライド)」をプロデュースしたインド出身のクリエイティブ・ディレクター、マンジョット・ベディ氏と石本淳也氏、全国介護付きホーム協会の遠藤健代表理事(SOMPOケア社長)らによる特別講演を行った。同サミットは、介護現場の事例を共有して質の高い高齢者ケアを提供するのが狙い。

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