介護職、自信を得て次の一歩 ~医療職が感染対策を助言~

2020/07/09

感染症対策に慣れない福祉や介護の現場へ、医療職がアドバイスに出向く取り組みが進んでいる。現場の悩みは多種多様。マスクはどこまで不可欠なのか、車いすの車輪まで消毒するのか。「こうしたらいい」「それでいい」と助言を受けた介護職らは、自信をもって次の一歩を踏み出していく。

福祉の現場には、新型コロナウイルス対策の様々な悩みがある。感染対策をアドバイスする大江将史医師(右から2人目)

■「大丈夫」に安堵

東京都江戸川区にある障害者の自立生活センター「STEPえどがわ」は6月、NPO法人「ジャパンハート」の医師と看護師の訪問を受けた。

STEPえどがわは、障害者の権利擁護やヘルパー派遣などを行う。重度障害者にとって、ヘルパーは〝命綱〟。同所の今村登理事長は、「感染者が出てヘルパーを派遣できなくなると、利用者の命にかかわる。感染者を出さないことが最重要」と危機感を募らせる。

医療チームから防護服の脱ぎ方を学び、自前の感染症マニュアルを確認してもらった。マニュアルを作成したSTEPえどがわの介護福祉士で看護師の市川裕美さんは、「ネットや知人を頼って作ったので内容に自信がなかった。『大丈夫』と言ってもらい、今後は自信をもって伝えていける」と安堵した。

■ささやかで偉大な活動

STEPえどがわに医療チームを派遣したのは、公益財団法人「風に立つライオン基金」。歌手のさだまさしさんが5年前、「ささやかで偉大な活動を行う人を応援する」と設立した。新型コロナウイルスの流行に際し、一般から寄付を募り、福祉現場に医療チームを派遣している。同基金の古竹孝一理事長は「医療と福祉をつなげる活動に重きを置きたい」という。

■現場の悩みは多種多様

実際、介護の現場からは予想外の質問が出る。

「利用者さんの車いすの車輪も消毒した方がいいですか?」

「入浴介助のときにマスク着用が辛いです。外してもいいですか」

訪問した「ジャパンハート」の医師、大江将史さんは、「考えたこともない質問だった。現場はこういうことで困るんだ、と学びがあった」と言う。

回答は一律ではない。個々のケースで優先順位を考えてアドバイスする。「医療は病気を見るだけでなく、生活にどこまで踏み込めるかが大切。福祉の悩みがすくいきれていない」と指摘する。

ガウンを作る認知症の高齢者(右)とスタッフ=東京都町田市のDAYSBLG!

■医療用ガウンを製作

悩みが解消されると、福祉の現場は思いがけない力も発揮する。

東京都町田市にある介護事業所「DAYSBLG!(デイズビーエルジー)」は、認知症の高齢者らが日中を過ごす場だ。ジャパンハートの訪問を受けた後、利用者とスタッフが感染防止のビニール製ガウンを作り始めた。

雑談の中で防護着を作れると知り、スタッフと利用者が「やる!」と手を挙げたのだ。今後は風に立つライオン基金が製品を購入し、介護や医療の現場に提供する。

DAYSBLG!のスタッフで介護福祉士の佐藤亜美さんは、「メンバー(利用者)さんは、誰かのために何かしたいと思っている。(要介護の人にとって)意味がある仕事をしていると感じられることはすごく大きい」と喜ぶ。

製作に当たっては、利用者とスタッフが3人がかりでビニールシートを切断。テープで張り合わせ、ポリ袋に入れて密閉する。

同所ではこれまでも、認知症の高齢者らが近隣のディーラーで洗車をしたり、チラシのポストインをしたりしてきた。社会参加をして、ささやかな収入を得るのが願いだ。

人と人がつながり、支援が次の支援を生む。

大江医師は「作っている人の思いまで載せて、ガウンが届くといい」と話している。

 

風に立つライオン基金への寄付は、同基金ホームページから。
https://lion.or.jp/donation/

フォローすると、定期的に
\ケアするWebマガジン『ゆうゆうLife』の更新情報が届きます。/

Facebookページをフォロー
Share
LINE