けやきの家~認知症デイで子ども食堂~

2020/01/27

年をとっても、認知症になっても、地域で役割を持って暮らしたい-。当事者のそんな気持ちを生かし、子ども食堂を実施する認知症デイサービスがある。支えたり、支えられたり、人生には色々な役割がある。地域の社会福祉協議会が後押しする。
金曜日の午後、埼玉県三芳町のデイサービスセンター「けやきの家」で、週1回恒例の夕食の献立作りが始まった。子ども食堂を開く準備だ。認知症デイサービスの利用者とスタッフ、ボランティアがメニューを決め、調理と準備をする。

「子ども食堂」で出すカツカレーの準備をする

■メニュー決めから

「今日は、何を作る?」
「最近、カレー、してないよね」
「スープもいる?」
「要らない」
「みそ汁がいるよ」
「カレーにみそ汁?」
「みそ汁とコンソメだと、どっちがいい?」
「コンソメの方が合うと思う」
曲折の末、メニューはカツカレーとコンソメスープに決まった。デザートには庭でとれた柿を出す。材料は、地元農家から提供されたニンジンやジャガイモ。足りない食材があれば買い出しに出かけ、スタッフや子供たちのお代わりも含めて約50~60食を作る。
最近通い始めた若年性認知症の女性(61)は、ジャガイモを丁寧に洗いながら、「みんなと一緒に過ごせることが楽しい」と言う。できないことがあっても、受け入れられる安心感がある。同じく若年性認知症で、所沢市から通う男性(64)は、「料理なんてしたことがなかった。でも、子供の喜ぶ顔を思ってメニューを考えるよ」という。

慣れない作業は、スタッフの手を借りて

■支える側でいたい

けやきの家は、三芳町社会福祉協議会が運営する。認知症デイサービスで子ども食堂を始めたのは3年前。管理者の内城一人さんは、「若年性の人は病識があることが多い。サービスを受ける側でなく、提供する側にいたいと考えているし、地域とつながっていたいと考えている。その思いをくみたかった」と言う。

若年性認知症の人に高齢者向けのサービスが合わないことは、関係者に共通の悩みだ。身体機能はさほど衰えていないし、適切な助けがあれば、できることも多い。

当事者には、若くして支えられることへの葛藤もある。デイサービスにやってきても室内に入らず、「こんなところで遊んでいる場合じゃない」といらだつ男性もいた。仕事をしなければ、収入を得なければ、家族を守らなければと、もどかしさを募らせる。

献立を作ったり、食事を用意したり、音楽を楽しんだり、楽しみは盛りだくさんだ

■ヒーローにもなる

思い切って子ども食堂をスタートしたら、本人だけでなく、家族からも「表情が一変した」と評判がいい。この日も5時ごろには料理が整い、当事者らは一足先に食事を始めた。

やってくる子供たちは日によって20~30人。親子連れから高校生まで幅広い。子供は先入観がない。以前は、卓球の代表選手だった男性とのプレーを楽しみにやってくる子供もいた。卓球台を出して対戦するひととき、子供にとって認知症の男性はヒーローになる。

ただ、一連のサービスには手間も人手も必要で、利用定員は6人にとどまる。「子ども食堂でなくても、認知症の人が活躍できる場が、社会の中にたくさんあるといい」。内城さんはそう願っている。

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